【翻訳】FAQ - 6. 自己無撞着
RESOURCES - FAQ - 6. Self Consistancyの翻訳です。翻訳間違い等ありましたら、コメント欄にお願いします。
6. 自己無撞着
6.1 XYZの単位は何ですか?
特に指定しない限り,PWscfの入出力単位系は"リュードベリ"であり,エネルギーはRy,長さはボーア半径a0などです。CPでは代わりに"ハートリー"単位系を使います。このとき,エネルギーはRyではなくHaとなります。電荷密度の単位は,はa0-3で,全電子数を意味します。
6.2 中々収束しなかったり,全く収束しません。
多くの場合,入力ファイルに不備があるか,計算対象の系が金属なのに絶縁体として扱っているかです。そうでなければ,mixing_betaを0.3 ÷ 0.1程度に減らして,mixing_modeを適切な値に変えてみてください。
6.3 全磁化と絶対磁化の違いは何ですか?
全磁化はセル中の磁化を積分したもので,
と書けます。絶対時かはセル中の絶対磁化を積分したもので,
となります。
単純な強磁性体の場合,両者は一致します(符号は異なる可能性はあります)。FeOやNiOなど,単純な反強磁性体の場合,はゼロ,は各二原子の磁化の2倍になります。
6.4 各原子の磁気モーメントはどのように計算しますか?
多原子系の局所磁気モーメントを定義する"正しい"方法はありません。多くの場合,近似法として,原子の状態密度を投影して算出します。QEではprojwfc.xを用います。projwfx.cでは,各原子波動関数へ投影された状態密度が多数のファイルに,また大量のデータが標準出力に出力されます。最終行付近に,Löwdin電荷を各原子の角運動量とスピン成分に分離した結果が記載されています。
6.5 投影した状態密度や波動関数のYLM成分の次元は何ですか?
出力l行目のm個目の要素の次元は以下の通りです。
1, cos(phi), sin(phi), cos(2*phi), sin(2*phi), ..., cos(l*phi), sin(l*phi)
projwfc.xのマニュアル「入力データ」もご覧ください。
6.6 部分Löwdin電荷の総和が全電荷と異なるのは何故ですか?
Löwdin電荷等,電荷密度は総和則を満たしません。計算に使われる原子軌道が任意なものであるという理由から納得できるでしょう。不足している電荷が非局在であったり,結合に寄与していると考えることもできますが,Löwdin電荷とはまた別の範疇のことです。
(Stefano Baroni談, 2009年9月)
splillingパラメータの定義(Sanchez-Portal et al., Sol. State Commun. 95, 685 (1995))も合わせてご覧ください。spillingパラメータは,ハミルトニアンの固有状態が部分空間の外へどの程度はみ出しているかを調べることによって,結晶の固有状態を表す擬原子波動関数の基底を評価します。
6.7 フェルミエネルギーはどこに記載がありますか?
出力ファイルに出力されます。されていないとしたら,フェルミエネルギーを細かく計算するのに必要なガウス関数型スメアリングの情報を入力していなかったのでしょう。その場合,pw.xは最高位の占有レベルと最低位の非占有レベルを出力します。計算するバンドの数が入力されていなければ,占有バンドのみを計算します。
6.8 コーン-シャムエネルギーの基準値は?コーン-シャムレベルが負の値になります。
6.9 フェルミエネルギーの値が変です。
全てのエネルギーと同様,フェルミエネルギーの値は基準レベルに依存します。得たいフェルミエネルギーは,真空レベルを基準としたもの,つまり仕事関数だと思います。これを得るために,真空レベルが何かを知る必要がありますが,バルク計算だけから真空レベルを得ることは出来ません。
(Stefano Baroni談, 2008年9月)
6.10 平衡状態で圧力や力がゼロになりません。
格子定数を固定して計算した場合,擬ポテンシャルやカットオフ,k点が完璧でない限り,圧力や力がゼロになることはありません。計算で平衡状態となるようなセルは,実験値とは僅かに異なるでしょう。格子定数が僅かに異なると,圧力や力はkBarのオーダーの圧力や力で変わるということに注意してください。
6.11 同じ初期構造でも,構造緩和とsrcとで結果が異なります。
まず第一に,構造が本当に同じであるかどうかを確認してください(エヴァルトエネルギーを比較します)。セル可変に使われる平面波基底セットはカットオフと初期セル構造によって決まります。最後の計算を同じカットオフで行っていれば,平面波基底が異なるため,結果は僅かに異なります。カットオフが小さ過ぎなければ,差異は僅かでしょう。QE v.4.3.1以降では,最終SFCは,最終構造で得た平面波基底セットを使って,構造緩和の後に実行しています。
構造緩和計算用に運動エネルギー関数を修正して使っている場合,圧力や力の計算結果に影響を与えることに注意してください。
6.12 電荷密度の初期推定値が負になります。
セルフコンシスタントを実現するには,反復アルゴリズムを実行するために初期推定電荷密度が必要です。通常,最初の推定値は擬ポテンシャルデータを元に,原子の電荷を重ねて作成します。
多かれ少なかれ,この推定電荷は平面波を展開するには硬いため,どうしても誤差が発生してしまいます。特に,単位胞が大きく,単位胞内にあまり原子がない場合,局所的に負の電荷密度になりがちです。
"しかし,これは大きな問題ではありません。というのが,適切に処理され,計算サイクル中に無くなってしまうためです。もちろん,あまりに程度が酷い場合(電子数×0.001)は,カットオフが小さ過ぎるために起こっていると思われます。" (L. Paulatto談, 2008年11月)